【5月第2週】iOS 14.5から考える「プライバシー保護 × 広告収益」
4月27日にAppleの「iOS 14.5」がアップデートリリースされました。様々な機能が追加されさらなる進化を遂げていますが、その中のプライバシーにかかわる変更が様々な議論を巻き起こしています。今回はiOSアップデートにまつわるユーザーのプライバシー保護と広告のあり方に関する話題です。
「iOS 14.5」の新機能
4月27日にAppleのiOS大型アップデートとなる「iOS 14.5」がリリースされました。今回のアップデートでは脆弱性の改善はもちろんのこと、新しい機能がいくつか追加されています。
【マスク着用でもロック解除】
以前はマスクを着用しているとFace ID でのロック解除ができませんでしたが、今回からApple Watchさえあれば、ロック画面解除の際に毎回パスコードを打ち込む必要がなくなりました。Apple Watch Series 3以降を用いて、iPhone X以降の機種のFace IDで認証する際に利用できる機能です。設定メニューにある「Face IDとパスコード」からApple Watchを使ったロック解除に同意すれば利用できるようになり、Apple Watch着用中、iPhoneでFace IDが起動するとロックがすぐ解除することが可能となります。コロナ禍を受けた新機能といえます。
【新製品AirTagに対応】
30日発売の新製品「AirTag」は、「探す」アプリからAirTagの場所を探せるようになりました。様々なモノにこの「AirTag」を取り付けることで紛失防止に役立ちます。また、「正確な場所を見つける」機能により、iPhone 11シリーズおよびiPhone 12シリーズでは近くにあるAirTagの方向や距離も音、触覚、視覚で案内してくれます。
【その他の追加機能】
「マップ」では、路上で遭遇した事故を報告することも可能になります。さらに新しい絵文字として、燃えさかるハート、当惑した顔、ため息をつく顔なども追加されています。そして、後述に紹介する「AppTrackingTransparency」(ATT)」です。
『iOS14』
(出典:Appleより)
「iOS 14.5」で広告が変わる?
前述の新機能に加え、様々な議論を巻き起こしている「AppTrackingTransparency(ATT、Appのトラッキングの透明性)」が導入されました。ATTは、AppleがApp Storeに登録するアプリの開発者に義務付ける新しいルールです。アプリがユーザーに関するデータを収集する場合、ユーザーがアプリを最初に起動する際と、iOS 14.5にアップデート後にアプリを最初にアップデートする際、データ収集の許可を求めるポップアップカードを表示する必要があるというものです。このポップアップ表示、iOS14.5を利用の方ではすでに目にしている方も多いのではないでしょうか。
ユーザーはこのポップアップ表示に対して「Appにトラッキングしないように要求」を選択しても問題なくアプリを利用できます。しかしアプリ提供側にとって、この選択をされるとアプリやWebサイトを横断するユーザーのアクティビティは追跡できなくなり、効果的なターゲティング広告の表示に利用できなくなります。米FacebookではこのATTについて、ユーザーがトラッキングを許可しないと同社の広告ネットワークでのターゲティングにデータを利用できなくなり、アプリ開発者やパブリッシャーの収益が制限されるとして抗議しています。
そうしたなか、米Verizon傘下の広告分析企業Flurry AnalyticsがiOS 14.5リリース時から続けている「Daily Opt-in Rate After iOS 14.5 Launch」調査の結果、「AppTrackingTransparency」(ATT)を通じてのアプリでのトラッキング許可カード表示で、ユーザーのおよそ88%は「Appにトラッキングしないように要求」を選んでいることがわかっています。この調査は世界の約530万台のモバイル端末を対象に行なっているもので、過去13日間においてトラッキングを許可しているユーザーの率は11〜13%です。
ユーザー目線に立てば、自身の行動遍歴がトラッキングされるのを望まないというのは当然のことでしょう。とはいえ、広告を的確にリーチできなくなるとアプリ開発者やサービス提供側にとっては先にも触れたようなパブリッシャーの収益が制限されてしまう事態になります。そうなると今後様々なサービスの有料化といった流れになってくるかもしれません。
『「iOS 14.5」のATT機能、ユーザーの約88%が「トラッキングしないように要求」を選択──Flurry調べ』
(出典:2021年05月09日 ITmedia記事より)
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